
人前で話す機会は、学生時代の発表から、社会人になってのプレゼンや挨拶まで、さまざまな場面で訪れます。
特に、5分以内のショートスピーチでは、「何を伝えたかったのか分からない…」となりがちです。
そんなときにおすすめしたいのが、「3段構成」のスピーチ術です。
起承転結は、実は難しい
日本人にとってなじみ深い「起承転結」ですが、実はショートスピーチには不向きな構成です。
起承転結はもともと漢詩の構成法。
場面を「転」で大きく切り替えることで意外性を生む形式ですが、短いスピーチの中でこれを使いこなすのは、かなりの難易度があります。
たとえば、以下のような有名な起承転結の例があります。
(起)大阪本町 糸屋の娘
(承)姉は十六 妹が十四
(転)諸国大名は 弓矢で殺す
(結)糸屋の娘は 目で殺す
この漢詩風の構成を、現代語訳すると以下のようになります。
(起)大阪・本町にある糸屋の娘さんで、
(承)お姉さんは16歳、妹さんは14歳です。
(転)全国の大名たちは弓や矢で人を殺しますが、
(結)この娘さんたちは、その目で人を射抜きます。
この詩の「転」では、話題が突然「大名の戦(いくさ)」に飛び、そこから「目で殺す=見つめられて心を奪われる」へと落とす構成になっています。
印象的ではありますが、スピーチで同じような転換をすると、話の筋が見えにくくなりがちです。
確かに面白さや風情はありますが、スピーチとして考えた場合には、唐突で話の筋が見えづらくなってしまうため、短時間で伝えるには不向きな形式と言えるでしょう。
「3段論法」が伝わる理由
ショートスピーチには、以下のような「考え → 事実 → 考え(まとめ)」の3段論法がぴったりです。
3段論法のメリット
- 話の概要を最初に伝えることで、聞き手の理解と関心を得やすい
- 途中で話が少し逸れても、最初に論点を出しているので伝わりやすい
- 最後にもう一度考えを述べることで、印象に残りやすい
【具体例】3段論法で話すスピーチ例
たとえば、「挑戦することの大切さ」をテーマにしたスピーチなら、以下のように組み立てられます。
🔷1段目:考え(主張)
私は、どんなことでも“挑戦すること”に意味があると思っています。
🔷2段目:事実(具体例)
高校時代、私は陸上部に所属していました。ある日、未経験の800メートル走に出場することになりました。
正直、自信もなく、「やめておいたほうがいいのでは」という気持ちもありましたが、思い切って挑戦しました。
結果は、ビリから2番目。でも、走り終わったあと、「最後まで走りきったね」と先生が声をかけてくれたことが、今でも心に残っています。
🔷3段目:考えの繰り返し(まとめ)
挑戦には、結果だけでなく、自分を前に進める力があります。だからこそ、私はこれからも「やってみる」という気持ちを大切にしたいと思っています。
このように、自分の経験を交えて話すことで、聞き手にとって「知らない情報」を自然と含めることができます。
スピーチのポイント3つ
①「それで、何が言いたいの?」とならないように
まず大切なのは、スピーチ全体で伝えたいことを一つに絞ることです。
- 何を伝えたいのか?
- なぜ伝えたいのか?
この2つがはっきりしているだけで、スピーチ全体に芯が通ります。
②「聞き手が知らない情報」を入れる
事実だけを並べても、聞き手は飽きてしまいます。
自分の体験や感情、考え方は、聞き手にとって未知の内容です。
それがスピーチを印象的なものにするポイントです。
③話題が複数あるときは「数字」を使って構成を明確に
「私が大切にしている考えを3つお話します」
「これから、2つのエピソードを紹介します」
など、聞き手が道筋をたどれるように案内することも大切です。
スピーチを締めくくる言葉
話が終わったことを明確に伝えると、聞き手は安心します。
以下のような表現を使って、しっかり締めましょう。
「以上でスピーチを終わります。ありがとうございました。」
「ご清聴ありがとうございました。」
「これで私の話を終わります。」
途中で時間が足りなくなっても、終わりをきちんと伝えることが大切です。
伝えたいことは1つでOK!
まずは3段構成を試してみよう
スピーチは、「何を話したか」以上に、「何が伝わったか」が重要です。
そのためには、「考え→事実→考え」の3段構成で、聞き手にとってわかりやすく伝えることが効果的です。
あなたの経験や思いを、ぜひシンプルな構成で伝えてみてください。
きっと、より多くの人の心に届くスピーチになるはずです。